
河合隼雄著
『無意識の構造』より
『個性化の道を進むためには、われわれは自分の内界に目を向けねばならない。しかし、ここにいう内界は、すなわち無意識界である。それは内省可能な領域を指しているのではないことに注意しなくてはならない。自己をみつめるとか、内界に目を向けるということで、自分の感情をあれこれ表現したり、自分の心境をああでもない、こうでもないとひねくりまわすようなことをする人もあるが、そのようなことを言っているのではない。われわれが問題としている内界は、自我によってコントロールできない、「あちら」の世界なのである。この世界の存在は自ら体験したものでないかぎり、おそらく解らないであろう。』